歯周病とは、歯と歯茎の間から侵入した細菌が、歯茎に炎症を引き起こしたり(歯肉炎)、歯を支える骨を溶かしてグラグラにしたり(歯周炎)する病気のことです。
初期の段階では自覚症状に乏しいため、知らない間に症状が進行してしまうケースも少なくありません。
実は、一度歯周病になってしまうと、お口の状態を完全に元通りにすることはできないのです。
しかし、正しい治療を行うことで、進行を食い止めて健康な状態に戻すことはできます。
この記事では、歯周病の治療方法や治療において大切なことを解説していきます。
「お口のトラブルが気になっている」「歯周病と診断されたけどなかなか治らない」という悩みを抱えている方は必見です。
歯周病は治るもの?
残念ながら、歯周病は基本的には治りません。
ただし、この「治らない」というのは「病気になる前の状態には戻せない」ということを指します。
完全に元の状態に戻すことは難しいですが、歯科医院での適切な治療と自宅でのセルフケアを行うことで、健康な状態に戻していくことは可能です。
歯周病を自分で治すことはできる?
自宅で適切なブラッシングを行うことで、歯周病の症状を改善することができます。
しかし、歯周病自体をセルフケアで根本的に解決することはできません。
歯周病を治すためには、歯科医院による根本的な治療が必要不可欠ですので、症状が進行する前に歯科医院でチェックしてもらうことをおすすめします。
要チェック!歯周病の進行具合の見極め方
歯周病は、「初期」「中等度」「重症」と進行していきます。
歯周病の進行具合は「歯周ポケット」と呼ばれる、歯と歯茎の間にある溝の深さで見極めることができます。
初期段階の歯周病は、歯周ポケットの深さが2〜5mmです。
歯周ポケットが通常よりも深くなるだけでなく、歯茎が薄ピンク色から赤色に変化していきます。
中等度となると、歯周ポケットは5〜7mmになります。
歯を支える歯槽骨の半分程度がダメージを受けた状態です。
また、歯が浮くような感覚がしたり、硬いものが食べにくくなったりして、飲食時には不快感を伴うこともあるでしょう。
歯周ポケットの深さが7mm以上になると、重症の歯周病と判断されます。
歯槽骨の3分の2以上がダメージを受けている状態で、歯のグラつきがひどくなります。
食事を摂ることが難しくなったり、口腔内で出血を起こしたりするリスクもあるでしょう。
歯周病の進行に合わせた歯科医院での治し方
ここでは、歯周病の進行ごとに行われる歯科医院での治療について解説していきます。
初期の場合(歯を磨くと出血する・歯石が少しついている)
初期の歯周病では、「歯周ポケットの検査」と歯石を除去する「スケーリング」という処置を行います。
歯石とは、歯に付着した石のような固いかたまりのことです。
磨き残した歯垢(プラーク)が唾液に含まれるミネラルと結合して石灰化したもので、ざらつきがあり、汚れが付着しやすい特徴があります。
スケーリングによって歯石を除去することで、歯周病菌が繁殖するのを防ぐことができます。
中等度の場合(歯茎がかゆい・歯茎が腫れて出血する)
中等度では、スケーリングに加えて、「SRP(スケーリング・ルートプレーニング)」という処置を用いて、スケーリングで除去できない歯茎の下の歯石を除去します。
歯周ポケットの奥深くまで器具を入れる必要があるため、痛みを伴う場合は麻酔を使用する場合もあります。
重症の場合(歯がグラグラする・食事が困難になる)
中等度で行う処置でも改善が図れない場合は、歯茎を切開し、歯茎の下にある歯石をSRPで除去する「フラップ手術」を行います。
そして、歯周病が進行し、歯を支える骨が溶けてしまった場合は、人工膜やタンパク質などを用いて組織を再生させる「歯周組織再生治療」を行います。
治療内容や通院回数はお口の状況によって異なるので、担当の歯科医師と相談しながら、治療を続けていきましょう。
炎症が落ち着いたら口腔機能回復治療を行う
歯周病による炎症が落ち着いてきたら、「口腔機能回復治療」を始めていきます。
この治療は、歯周病によって失った咀嚼機能や歯の美しさ、発音機能を取り戻したり、噛み合わせを調整したりする目的で行います。
お口の状態によっては、矯正治療やインプラント治療を行う場合もあるでしょう。
歯周病の治療をするときに知っておくべき大切なこと
歯周病治療を受けるにあたり、不安なことも多いでしょう。
ここでは、歯周病治療をするときに知っておくべき大切なことをお伝えします。
歯周病の治療には時間がかかる
歯周病の治療期間は長く、進行具合が初期でも1〜3ヶ月ほどかかります。
重症にもなると、年単位での治療が必要になるでしょう。
一度進行してしまった歯周病は、歯の表面だけでなく歯周ポケットの中まで細菌が溜まっています。
進行具合によっては、麻酔を用いて治療をする場合もあるでしょう。
麻酔を用いた治療による身体的負担を考えると、歯石の除去は数回に分けて行う必要があるため、どうしても治療回数が多くなってしまうのです。
重症化している場合は、歯石の除去に加えて他の治療が必要になるため、さらに治療期間が長くなる傾向があります。
プラークコントロールが重要
プラークコントロールとは、歯周病の原因となる細菌の数を可能な限り減らすことを指します。
歯周病治療を効率良く進めていくためには、このプラークコントロールが重要です。
自宅でのセルフケアで適切な歯磨きを行い、物理的にプラークを落としていきましょう。
適切な歯磨きができているかどうかを確認するのであれば、歯科医院で歯磨き指導を受けることをおすすめします。
自宅でのプラーク除去には、歯ブラシによるブラッシングの他にも、歯間ブラシやフロスを使うのが効果的です。
また、プラークの染め出し液を使用して、定期的に磨き残しがないか視覚的にチェックするのもいいでしょう。
さらに、効果的なプラークコントロールのためには、食生活も重要です。
必要となる歯磨きの回数が増えるほど、プラークコントロールは難しくなります。
ダラダラと間食をしていると、お口の中の細菌は増え続けてしまうので注意しましょう。
まとめ
一度歯周病になってしまうと、元のお口の状態に戻すことはできません。
また、自力で歯周病を治そうとするのにも限界があります。
症状が進行すればするほど、健康な状態にまで改善させることは難しくなります。
そして、長期的な治療が必要になってくるでしょう。
少しでも歯に違和感を感じたり、お口トラブルが気になったりするのであれば、早めに歯科医院にかかるようにしてください。
歯科医院で継続した治療を受けながら、自宅でも適切なセルフケアを行うことが大切です。