歯科医院では「スケーリング」と呼ばれる処置を行うことがあります。
あまり聞き馴染みのない言葉かもしれませんが、「歯石取り」や「歯石除去」と同じ意味です。
定期検診の際に実施されることが多い施術ですが、「歯石を取って何の意味があるの？」と疑問に思っている人もいるでしょう。
そこでこの記事では、スケーリングの種類や歯石を除去する効果、治療後の注意点について解説します。
スケーリングとは
「スケーリング」とは、歯の表面に形成された歯石を、「スケーラー」と呼ばれる器具を使って除去することを言います。
歯石は歯垢が硬くなった物質で、歯ブラシによるブラッシングだけでは落とすことができません。
歯石自体に毒性はありませんが、細菌が繁殖しやすく、歯周病の原因になります。
そのため、セルフケアで落としきれなかった歯石は、定期的に歯科医院でスケーリングする必要があります。
スケーリングとルートプレーニングの違い
歯石除去は処置する部位によって、「スケーリング」と「ルートプレーニング」に分けられます。
歯の露出している部位を「歯冠（しかん）」、歯茎の中に埋まっている部位を「歯根（しこん）」と言い、スケーリングは基本的に歯冠部の歯石を除去することを指します。
ルートプレーニングとは、歯根面の歯石を取り除いて滑らかにする処置のことです。
ただし、歯石取りを総称してスケーリングと呼ぶこともあるので注意してください。
スケーラーの種類
スケーリングで用いられるスケーラーには、「手用スケーラー」「超音波スケーラー」「エアスケーラー」などの種類があります。
ここでは、スケーラーの種類を詳しく解説します。
手用スケーラー
手用スケーラーは、手で動かして使うスケーラーです。
先端の刃が鋭くとがっており、深い部分や狭いところの歯石を取り除くために使われます。
手用スケーラーは先端部の形によって種類が分かれており、前歯から奥歯はもちろん、歯冠と歯根の両方に対応できます。
超音波スケーラー
超音波スケーラーは、先端から超音波を発生させて歯石を取り除くスケーラーです。
超音波の振動が強いため、施術中に痛みや不快感を生じやすい傾向があります。
その分、歯石を取り除く効率は極めて高く、効果的に歯冠部の歯石を除去できます。
ただし、歯根など細かい部分の歯石除去には不向きです。
エアスケーラー
エアスケーラーは圧縮空気によって振動を起こし、歯石を除去するスケーラーです。
超音波スケーラーと仕組みは同じですが、振動数が少なく、パワーもありません。
そのため、超音波スケーラーよりも、施術中に痛みや不快感が生じにくい傾向があります。
お口のトラブル防止！スケーリングの効果
歯石を除去すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、スケーリングの効果について解説します。
歯周病が改善される
スケーリングは歯周病の原因である歯石を除去するため、歯周病の改善が期待できます。
歯周病とは、歯石で繁殖した細菌が歯茎や歯を支える「歯槽骨（しそうこつ）」と呼ばれる骨の土台を溶かしてしまう危険な感染症です。
歯肉の炎症や出血、歯がグラつくといった症状を引き起こし、最悪の場合、歯が抜け落ちてしまいます。
また、糖尿病や心臓病、脳卒中など、さまざまな合併症を引き起こす可能性もあります。
日頃のセルフケアや定期的なスケーリングを行えば、歯周病の症状を改善することができるでしょう。
歯垢や歯石が溜まりにくくなる
歯石の表面はザラザラしているため、一度形成されると歯垢が溜まりやすくなってしまいます。
そのため、スケーリングを行うことで歯の表面が滑らかになり、歯垢や歯石が溜まりにくくなります。
また、歯周病菌や虫歯菌は、歯垢や歯石のような汚れがないと、歯に定着することができません。
細菌が住み着きにくい環境が整うため、歯周病や虫歯の予防にもなります。
歯茎が下がらなくなる
歯石を放置すると、徐々に歯茎が下がっていきます。
これは「歯肉の吸収」と呼ばれる現象で、歯周病菌が歯茎に炎症を起こすことで生じる症状です。
スケーリングで歯石を取り除けば、歯茎が下がるリスクを抑えられます。
口臭を予防できる
スケーリングは口臭予防にもなります。
歯垢や歯石で繁殖した歯周病菌は、口臭の原因となる物質を発生させます。
スケーリングによって汚れを一掃することで、口臭の予防や改善に役立つでしょう。
スケーリングした後の注意点
歯周病の改善や口臭の予防に効果があるスケーリングですが、いくつかのリスクもあります。
ここでは、スケーリングした後の注意点を解説するので、歯石除去を行う前にきちんと理解しておきましょう。
一時的に知覚過敏になる可能性がある
スケーリングした後、一時的に知覚過敏になる可能性があります。
これは歯根面が露出することが原因です。
歯根面にはエナメル質が存在しないため、冷たいものに触れると痛みを感じてしまいます。
ただし、あくまで一時的なものなので、歯周病のリスクが高まる前に早急に歯石を取り除くようにしましょう。
歯茎から出血することがある
スケーリングした後は、歯茎から出血することがあります。
これは歯石が付いている部分の歯肉が、細菌の毒素によって炎症を起こして腫れているためです。
不安になるかもしれませんが、施術後に適切なブラッシングを行えば、2〜3日で炎症は治ります。
歯茎が下がったように見えることがある
スケーリングした後は、処置前と比べると歯茎が下がったように見えることがあります。
これは実際に歯茎が下がったわけではなく、腫れていた歯肉が引き締まり、下がったように見えるだけです。
本来あるべき状態に歯茎が戻っただけなので、心配する必要はありません。
歯と歯の間に隙間ができることがある
歯と歯の間に歯石が溜まっている場合は、スケーリング後に隙間ができることがあります。
そもそもスケーリングによって歯を削ることはありません。
歯と歯の間が広がったように見えるのは、溜まった歯石が取れ本来の状態に戻ったためです。
しかし、歯と歯の間の隙間は歯垢が溜まりやすいので、セルフケアや定期検診を受けて歯石を放置しないようにしましょう。
スケーリングした場所がザラザラする
スケーリングした場所を舌で触ると、ザラザラすることがあります。
これは歯石が付いている状態に慣れて、本来の歯の凹凸に違和感が生じるためです。
舌が荒れたように感じるかもしれませんが、1週間程度で違和感もなくなるので心配する必要はありません。
スケーリングにかかる費用の相場
スケーリングは、「保険適用」の場合と「保険適用外」の場合で費用が異なります。
歯周病や歯茎の炎症など、病気と診断された場合は、治療の一環としてスケーリング治療が行われ、保険が適用されます。
検査代を含めて3,000円〜4,000円程度が相場です。
歯茎の状態が良く、クリーニングが目的の場合は保険適用外となります。
自由診療のため、歯科医院によって費用は異なりますが、5,000円〜20,000円程度が相場です。
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まとめ
歯石を放置すると歯周病や口臭の原因になります。
日頃の歯磨きでは歯石を取り除くことは難しいので、定期的に歯科医院で歯石を除去してもらいましょう。
スケーリングをした後は、知覚過敏になったり、歯茎から出血したりすることがありますが、あくまで一時的なものなので心配はいりません。
歯が綺麗になるだけでなく、虫歯や歯周病の予防、口臭の改善に役立つので、定期的に歯科医院で診療を受けるようにしてください。