【歯周病予防】歯周病の予防法や対処法を歯科医師が詳しく解説!

歯周病になると口臭や歯ぐきの腫れ、出血、歯のぐらつきなどの症状が起こり、日常生活に支障が出る場合があります。

歯周病を予防するには、どのような方法が効果的なのか把握しておくことが大切です。

また、歯周病になったらどんな対処法があるのか気になる人もいるでしょう。

今回は、歯周病の予防方法や、歯科医院での対処法について詳しく解説します。

 

【セルフケア】歯周病の予防方法

歯周病の予防には、日々のセルフケアで口の中の衛生管理を行い、歯周病のリスクを減らすことが重要です。

ここでは、セルフケアでの歯周病予防方法のポイントを紹介します。

 

食後の歯磨きを習慣化する

歯周病は、歯の表面に付着するプラーク歯垢)に含まれる歯周病菌が作り出す毒素によって炎症が起こる病気です。

プラークはネバネバとしていて歯の表面に強く付着するため、うがいで洗い流すことができません。

プラークは食後数時間で形成されるため、食後の歯磨きを習慣化することが歯周病予防となります。

 

歯磨き方法の見直し

プラークを取り除くには、正しい磨き方をすることが大切です。

正しい歯磨きができるように、磨き方を見直してみましょう。

 

【正しい歯磨きのポイント】

  • 1~2本ずつ、20回以上磨く
  • 歯ブラシの毛先が広がらない程度の力で小刻みに動かす
  • 歯ブラシの毛先を歯の表面に直角にあてて磨く
  • 歯と歯ぐきの境目(歯周ポケット)は毛先を45度の角度で当てて磨く
  • 磨き残しを防ぐために順番に磨いていく

 

以下のような場所はプラークが残りやすいため、歯ブラシを当てる位置や角度を工夫して丁寧に磨きましょう。

  • 歯と歯の間
  • 奥歯の噛み合わせ
  • 歯と歯ぐきの境目
  • 抜けた歯の周り
  • 歯並びが悪い部分

 

デンタルフロスを使用する

歯と歯の間は歯ブラシが届きにくいため、歯磨きだけでは十分にプラークが取り除けません。

歯と歯の間の清掃には、歯の隙間に入れてプラークを掻き出せるデンタルフロスを使用しましょう。

歯ブラシとデンタルフロスを併用すると、プラークの除去率が約1.5倍になります。

デンタルフロスはロールタイプとホルダータイプがありますが、初めて使う人はホルダータイプが扱いやすいでしょう。

ロールタイプ 40cm程度の長さにフロスを切り取り、指に巻き付けて操作しながら歯と歯の間を清掃します。
ホルダータイプ ホルダーにフロスがついているタイプです。
前歯に使いやすいF字型と、前歯にも奥歯にも使いやすいY字型があります。

歯と歯の隙間が広い部分には、歯間ブラシを使うのがおすすめです。

歯の状況に合わせてデンタルフロスや歯間ブラシを使い分けましょう。

 

生活習慣を見直す

免疫力が低下すると細菌への抵抗が下がってしまいます。

ストレス・喫煙・食生活の乱れ・不規則な生活などによって免疫力が低下するため、歯周病予防には生活習慣を見直すことも重要です。

歯周病予防のために、以下のポイントに気を付けてみましょう。

  • 食事の栄養バランスを整える
  • タバコやアルコールを控える
  • 質の良い睡眠をとる
  • 適度な運動をする
  • ストレスを解消する

 

歯科医院で定期検診を受ける

自宅で行うセルフケアとあわせて、3ヶ月に1回を目安に歯科医院で定期検診を受けるのがおすすめです。

定期検診では、以下のようなことを行います。

問診 生活習慣や歯磨き習慣、持病などを確認します。
診察 虫歯の有無、プラークや歯石の付着、歯ぐきの炎症や出血の有無、歯周ポケットの深さ、磨き残しなどをチェックします。
歯のクリーニング 専用の器具を使い、歯ブラシでは落とせないプラークや歯石、着色汚れなどを取ります。
フッ素塗布 虫歯予防や歯質強化に効果的なフッ素の塗布(またはうがい)を行います。

定期的に歯科医院で歯や歯ぐきのチェック、歯垢の除去などをしてもらうと、歯周病のリスクを減らすことができます。

また、歯周病を発症した場合も早期発見・早期治療につながり、軽度であれば簡単な治療で改善できるメリットもあります。

 

歯周病!歯科医院での対処法

歯周病になってしまったとき、歯科医院では症状に合わせてケアや治療を行います。

ここでは、歯周病の基本治療・外科治療・ブラッシング指導について紹介します。

 

基本治療

歯周病の基本治療では、以下のようなことを行います。

 

【スケーリング・ルートプレーニング】

専用の器具や機械を使い、歯磨きでは取り除けない歯石を除去するスケーリングを行います。

ルートプレーニングは、細菌によって汚染された歯根の表面を研磨してなめらかにし、細菌をつきにくくすることです。

 

【咬み合わせの調整】

咬み合わせが悪いと歯周組織に強い力が加わり、歯に損傷が起こって歯周病の進行が早まることがあります。

そのため、マウスピースで歯にかかる力をコントロールしたり、歯を削って咬み合わせを調整したりします。

 

【不良修復物・補綴物のやり直し】

差し歯ブリッジインプラント入れ歯など修復物や補綴物が合っていないと、歯垢が溜まりやすくなって歯周病の原因となります。

ぐらついていたり外れていたりする修復物や補綴物がある場合は、除去してやり直します。

 

【暫間固定(ざんかんこてい)】

歯周病が進行して歯がぐらついているときは、物を噛むときやブラッシングの際に歯や周辺組織にダメージを与えてしまいます。

状態が安定するように、しばらくの間隣接する歯と固定する暫間固定」という治療を行う場合があります。

 

【抜歯】

歯周病治療はできるだけ歯を残す処置が行われますが、歯根の先まで歯周病に侵されているような重度の歯周病のときは、抜歯する場合もあります。

 

外科治療

歯周病が悪化している場合、症状に合わせて以下のような外科治療を行います。

 

【歯肉剥離掻爬術(しにくはくりそうはじゅつ)】

歯肉剥離掻爬術はフラップ手術とも呼ばれる手術法で、歯周ポケットが深くて歯垢や歯石を完全に取り除けない場合に行います。

歯ぐきを切開し、歯根を顎の骨から剥がして歯垢や歯石を除去した後、歯ぐきを再び戻して縫合します。

 

【遊離歯肉移植術(ゆうりしにくいしょくじゅつ)】

遊離歯肉移植術は、上顎から歯ぐきを採取して足りない部分に移植する手術法です。

歯周病によって歯ぐきが下がり、歯根が露出している場合に行うことがあります。

 

【結合組織移植術(けつごうそしきいしょくじゅつ)】

結合組織移植術は、歯ぐきを結合している組織を切り取り、歯ぐきが足りない部分に移植する手術です。

遊離歯肉移植術と同じく、歯周病の悪化で歯根が露出している場合に行うことがあります。

 

ブラッシング指導

正しい歯磨き方法デンタルフロスの使い方などを身につけられるように、歯周病治療とあわせてブラッシング指導を行います。

また、歯周病になりやすい生活習慣を送っている場合は、生活習慣や食生活に関するアドバイスも行うこともあります。

 

歯周病は早期発見が重要!

2018年に実施された「全国抜歯原因調査結果」によると、日本人の歯を失う原因でもっとも多いのは歯周病です。

若いうちは虫歯によって歯を失う人が多いですが、中高年の世代になると歯周病によって歯を失う人が多くなります。

歯周病が怖いのは、全身にも影響を与える恐れがあることです。

歯周病の影響によってリスクが高まるといわれる病気には、以下のようなものがあります。

  • 狭心症
  • 心筋梗塞
  • 糖尿病
  • 骨粗しょう症
  • 脳梗塞
  • メタボリックシンドローム
  • 認知症
  • 関節リウマチ
  • 誤嚥性肺炎
  • 低体重児出産
  • 早産 など

歯や全身の健康を保つためには、若いうちから正しいセルフケア方法を身につけ、歯科医院での定期検診で早期発見することが重要です。

参考:歯の喪失の原因 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

まとめ

歯周病になりにくくするには、正しい歯磨きや生活習慣の見直しがポイントです。

ただし、歯周病は自覚症状がほとんどないまま進行していくことから、「サイレント・ディズィーズ静かな病気)」と呼ばれています。

症状に気づいたときには、歯周組織へのダメージが大きくなっていることが少なくないため、歯科医院の定期検診でチェックしてもらうことも大切です。

今回紹介したセルフケアや歯科医院での対処法などを参考にして、健康な歯を守りましょう。